浅学にして、国境なき医師団の最有力メンバーの一人が中村哲医師だとずっと以前から思っていたが、中村医師はペシャワール会というNGOの現地代表で、アフガニスタンで現に活動している方、という話である。
その中村哲医師がアフガニスタン東部ジャララバードで四日、銃撃されて死去されたとのニュースに接した。現地での状況をTVで視たが、屈強な男たちが涙を流し、葬儀では大統領が先頭に立って棺に寄り添っていた。
ところで11年前、伊藤和也さんという青年がアフガニスタンのある村で山賊に襲われ殺害され、村人たちが涙にくれているとのニュースが報じられた。伊藤さんはその村の開拓に力を尽くし村人たちに慕われていたという。私はこの時、伊藤さんというこの青年に国は国民栄誉賞を贈るべきだと思った。
今回、これも初めて知ったのだが、この伊藤さん達を指導し、何よりも自ら現地の開拓に当たったのが中村哲医師であった。(なお伊藤さんが殺害されたので、中村医師は自分一人が残り、日本から赴き現地の開発に協力していたチーム全員を安全のために日本に帰還させている)
私の純粋に個人的な見解であるが、伊藤さん、中村さんこそ金や名声のためではなく、困っている人を見ると日本人であれ、外国人であれ、助けずにいられなくなる気質らしい。大方の人間も他人を助けたい、他人に喜ばれたい、或いは他人に褒められたいという欲求を生まれつき持っていると思うが、あくまでも先ず自分自身が満たされた後の話である。それに反して伊藤さんや中村医師は自分を捨てても他人を助けたいと考えられる数少ない人であり、宗教的に言えば聖人、と呼ばれるに相応しい人である。私はこれ等の人々と同じ国民に生まれたことが単に嬉しく、誇らしく、声を上げて褒め称えたい衝動に駆られる。幸い我が国には国民栄誉賞という制度がすでに存在する。国は中村哲医師にこそ国民栄誉賞を授与して欲しい。