退職後本を読まなくなった。時間は有り余るほどあるのに本を買う気がしない。理由の一つは本の値段が高くなったと感じるせいである。つまらぬ小説でも千五百円以上もするし、ディジタル経由では本を読んだ気がしない。
ところが最近、朝日新聞で見かけた書評と広告に興味を惹かれた本があったので(値段も安かった)二冊とも購入したが、どちらも非常に読みやすく(難しい内容を子供でも分かるほど簡単に意訳している)、久々に読書を楽しんだ。
それらの内容と純個人的に最も勉強になった部分を挙げてみたい。
高橋源一郎著 一億三千万人のための『論語』教室 河出書房新社
あの難解な古典だが現代社会にも十分通用する‘仁’(‘仁義’の仁)の教えを孔子がエピソードやたとえ話を通して述べたことを分かり易く解説している。また語彙、用法についても、今時の若い人々の流行り言葉さえ駆使して説明しておられるので、‘高橋先生、いろいろ下世話にも通じてらっしゃる’と感心した。
私個人にとって最も勉強になった部分は、子供のころ親父がよく言っていた‘貧しきを憂えず、等しからざるを憂える’という言葉は共産主義者のお題目とばかり思っていたが、そうではなく論語で孔子が語った言葉であったことを今回知ったことである。
小林弘幸著 免疫力が10割 プレジデント社
順天堂大学教授が書いた誠に時宜を得た本である。今年最も世界中の関心を集めた事件は新型コロナウィルス禍だったが、この悪魔に対抗できる最強の手段が免疫力なので先ずその解説をし、(そして究極の対抗力は‘今日を健康的に生きる’ことなので)さらに人が健康を保つために必要な日常の行いやその理由について解説している。
私個人的には十年来、夜食癖が治らず家人からしつこく非難されてきたが、何故それが体に悪いのかを副交感神経と腸の関係から平明に説明しているので理屈好きの私はこの論理にすっかり参ってしまい、今は夜食をきっぱり止めることに成功した。